歴代の彦根藩主で最も有名なのは、やはり井伊直弼でしょう。江戸時代末期には幕政の中心を担ったほどの人物ですが、青年期はただただ不遇でした。先々代藩主の十四男という家督相続から縁遠い立場で、また他家の養子になる機会にも恵まれませんでした。17歳から32歳までの15年間、彦根城三の丸の屋敷で飼い殺し状態にされてしまいます。花開くことも日の目を見ることもない埋れ木に自らを例えた和歌を残しているくらいですから、相当鬱々とした日々だったことが窺えます。
世の中を よそに見つつも 埋れ木の
埋もれておらむ 心なき身は